コラム

行政事件訴訟法施行後5年後の見直しについて

2011年05月
濱 和哲

当事務所の水野武夫弁護士が委員として参加した司法制度改革推進本部行政訴訟検討会(座長:塩野宏)は、国民の権利利益の救済を実効的に保障する観点からは行政訴訟制度の手続の整備が必要であるとして、平成16年1月、「行政訴訟制度見直しのための考え方」(以下、「考え方」という)を作成した。「考え方」においては、行政事件訴訟制度の具体的な見直しの考え方として、以下の点があげられていた。

1 救済範囲の拡大
(1)取消訴訟の原告適格の拡大
(2)義務付け訴訟の法定
(3)差止訴訟の法定
2 審理の充実・促進(処分の理由を明らかにする資料の提出の制度の新設)
3 行政訴訟をより利用しやすく、分かりやすくするための仕組み
(1)抗告訴訟の被告適格の明確化
(2)抗告訴訟の管轄裁判所の拡大
(3)出訴期間の延長
(4)出訴期間等の情報提供制度の新設
4 本案判決前における仮の救済の制度の整備
(1)執行停止の要件の整備
(2)仮の義務付け・仮の差止めの制度の新設

 周知のとおり、行政事件訴訟法については、昭和37年の制定以来、初めての実質的改正と評される大幅な改正がされたが(平成16年法律第84号)、改正法には「考え方」で示された上記の内容が大幅に取り入れられ、平成17年4月1日から施行がされている。
 改正法施行後すでに6年以上が経過し、その間、新設された義務付け訴訟や差止訴訟、さらには仮の義務付けや仮の差止めについても、多くの事件が裁判所に持ち込まれるなど、新設された制度も広く利用がされているようである。新たな制度が根付きつつあるのは喜ばしいことであるが、認容例はというと、残念ながらいまだ少ないというのが実情である。事件を申し立てる側の弁護士としては、認容例が少ないからといって申立てを躊躇する必要などまったくなく、裁判所に対して、救済の必要性を説得的に主張していくべきであり、裁判所としては、従来の司法消極主義的な発想から脱却し、法律上の制度として設けられた以上、救済されるべき事案に対しては積極的に認容判決又は決定がされることを望む次第である。

 ところで、改正法附則50条は、改正法施行後5年を経過した時点において、改正法の施行の状況を検討し、必要に応じて見直しをすべきことを定めている。日弁連では、改正法5年後見直しに関する改正案を作成し公表しているが(日弁連のホームページで参照することが可能である。)、上述のような現状の低い認容率を改めるためにも、同改正案が指摘するとおり、義務付け訴訟や差止訴訟、仮の義務付けや仮の差止めの訴訟要件は緩和されるべきである。本案に関する審理がされた上で棄却されたのであればやむを得ないのかもしれないが、訴訟要件という壁によって門前払いばかりがされているようでは、行政事件訴訟制度が国民にとって利用しやすい制度であるとは言い難く、国民の権利利益が実効的に救済されているのかについても疑問符が付きかねないのである。
また、5年後見直しに際しては、行政事件の訴訟進行の迅速化についても検討する必要があるのではないだろうか。通常の民事訴訟の場合、およそ1ヶ月に1度の割合で期日が開かれ、おおむね半年程度で争点整理がされるというのが一般的な事件の進行であると思うが、これがひとたび行政事件となると、次回期日は2、3ヶ月後というのもまれではなく、被告指定代理人の交替(転勤)により、さらに期日が伸びるというのもままある話である。その結果、行政事件に関しては、通常の民事訴訟と比べて、判決までの期間は必然的に長くなってしまっているのが実情である。国民の権利利益の実効的な救済という意味では、迅速な訴訟手続もまた不可欠の要素である。行政事件の訴訟手続の迅速化に関する検討が待たれる次第である。

以上