コラム

特別支配株主による株式等売渡請求について

2016年01月
松井 亮行

1 はじめに
 ご承知のとおり、平成27年5月1日に改正会社法が施行されました。今般の会社法改正の内容は、コーポレートガバナンスのあり方の見直し、親子会社に関する規律の見直し等、多岐に亘りますが、今回は、新たなキャッシュアウト制度として設けられた「特別支配株主の株式等売渡請求」の制度について、ご紹介したいと思います。

2 従来のキャッシュアウトの手法

 キャッシュアウトとは、一般的に、少数株主の個別の同意を得ることなく、少数株主全員に金銭を交付して少数株主の株式全部を取得する行為のことをいいます。
 従来においては、キャッシュアウトの手段として、主に、全部取得条項付種類株式等が利用されていましたが、時間的・手続的な負担が大きいこと等が問題とされていました。

3 特別支配株主による株式等売渡請求制度の概要

(1) 改正会社法179条の創設
 改正会社法179条以下は、新たに設けられた「特別支配株主による株式等売渡請求制度」を定めています。
 簡単に言えば、「特別支配株主」が、対象会社の少数株主の全員に対し、株式を売り渡すよう請求できることとし、その結果、当該「特別支配株主」が、対象会社の発行済み株式総数の100%を保有することが可能となります。

(2) 特別支配株主とは
 特別支配株主とは、対象会社の総株主の議決権の90%以上を保有している株主のことをいいます。この「90%」の保有要件の算定に当たっては、特別支配株主自身が保有する議決権に加えて、特別支配株主の完全子法人(発行済株式の全部を特別支配株主が保有する法人)が保有する議決権を合算することが可能です。
 例えば、対象会社であるX社について、X社の総株主の議決権の60%を保有しているA、議決権の30%を有しているB社(B社の発行済株式はすべてAが保有)、議決権の6%を有しているC、議決権の4%を有しているDがいるとします。
 この場合、Aは、Aの完全子法人であるB社の保有株式を合算すると、合計90%の議決権を有していることとなります。したがって、Aは、X社における特別支配株主となり、C及びDに対して、以下の手続に則って、株式の売渡を請求することができます。

(3) 株式等売渡請求の手順(179条以下)
① 特別支配株主は、対価の額やその算定方法、取得日等を定めて、対象会社に対して通知を行います。
② 売渡請求については、対象会社の承認(取締役会設置会社においては取締役会の承認)が必要です。
③ 対象会社が承認した場合、対象会社は、取得日の20日前までに、売渡株主等に対して、売渡請求を承認したことや売渡条件等を通知します。
④ この通知によって、特別支配株主から売渡株主等に対する売渡請求がなされたものとみなされ、全ての売渡株主等に対して売渡請求の効果が生じます。
⑤ 取得日として定めた日において、特別支配株主は、売渡株式等を全て取得することができます。

4 留意点

 以上のように、新たに創設された特別支配株主による株式等売渡請求制度によって、特別支配株主は、対象会社の発行済み株式総数の100%を保有することが可能となります。
 なお、特別支配株主による株式等売渡請求は、特別支配株主以外の全ての株主(完全子法人を除く)を対象としなければなりません。したがって、例えば、自らに友好的な一部の株主だけを対象から除くことはできません。
 また、対象会社の取締役としては、売渡条件の適正性さを慎重に判断する必要があり、不適正な売渡条件を認めてしまった場合、取締役の任務懈怠責任が問題となり得ます。


(事務所報 №4 2015年12月号掲載)