コラム

クロレラチラシ配布差止請求訴訟最高裁判決

2017年06月
木澤 圭一朗

 今回の記事では、クロレラを使った健康食品等を販売する新聞折込みチラシに関する訴訟の最高裁判決(平成29年1月24日判決)をご紹介します。

 消費者契約法では、重要な事項につき事実と異なることを告げる等の態様で消費者に「勧誘」がされている場合、適格消費者団体が、これを差し止める請求を行うことが認められています(消費者契約法12条)。
 上記訴訟は、原告である適格消費者団体が被告に対して、被告が配布していた健康食品のチラシについて「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(旧薬事法)に違反する表示がされている他、実際には存在しない効能等が記載されていることを根拠に、重要な事実について異なることが記載された状態で勧誘がされているとして、配布の差し止めを求めたものです。

 この訴訟の中では消費者契約法にいう「勧誘」とは何かということが問題となりました。消費者契約における「勧誘」とは特定の者に向けた働きかけが典型とされており、不特定多数者に向けたチラシ等は対象ではないと考える見解が有力だったためです。実際に、控訴審である大阪高裁は、消費者契約法上の「勧誘」には、「不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれない」から、不特定多数者に配布される新聞の折り込みチラシは、消費者契約法2条4項の「勧誘」に当たらないと判断しました。
 他方で、最高裁は次のとおり、大阪高裁の判示と異なり、不特定多数者に向けられた広告でも「勧誘」に当たりうると判断しました。


「(消費者契約法上の)「勧誘」について法に定義規定は置かれていないところ,例えば,事業者が,その記載内容全体から判断して消費者が当該事業者の商品等の内容や取引条件その他これらの取引に関する事項を具体的に認識し得るような新聞広告により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは,当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから,事業者等が不特定多数の消費者に向けて働きかけを行う場合を上記各規定にいう「勧誘」に当たらないとしてその適用対象から一律に除外することは,上記の法の趣旨目的に照らし相当とはいい難い。
 したがって,事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても,そのことから直ちにその働きかけが法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。」


 最高裁は、働きかけが「不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても」勧誘に当たらないわけではないと判断しています。これは、新聞折込チラシなどの広告が「勧誘」に当たるという判断ではないですが、広告でも「勧誘」に当たり得るという判断をしたわけです。
 最高裁は、広告についてどのような内容の働きかけであれば、「勧誘」に該当するかという点については積極的には判断していません。事業者としては、消費者向けの広告等を行う際、消費者契約法の規制が及ぶかもしれないと意識をした上で、規制を遵守することが必要となると言えるでしょう。

 上記の訴訟の中では、真実と異なる表示という点で景品表示法の規制との抵触が、承認を受けていないにもかかわらず疾病予防効果をうたった点について旧薬事法の規制との抵触が、特定保健用食品の承認を受けていないにもかかわらず健康増進効果をうたったとして健康増進法の規制との抵触が問題となっています。商品やサービスの表示についてはこれらの法律の他、極めて多種多様な規制があり、中には刑事罰が科される厳格なものもあります。特に消費者に向けた広告等を出すときは、自らが販売する商品・サービスについてどのような規制があるのか、十分に調査することが必要と言えるでしょう。


(事務所報 №16 2017年4月号掲載)