コラム
中国ビジネス法務「最前線」-知財編 1(2015年10月)
2017年07月
谷口 由記
今や世界の工場と化した中国で、日本企業の成功のビジネスモデルは、自社ブランドの製品を製造委託(OEM)して日本に輸入したり、中国から海外へ輸出する形態のほか、巨大な中国マーケットへ進出して自社ブランドの製品を中国で製造し販売する形態です。このビジネスが成功するためには中国で自社ブランド・自社技術が保護されることが必要不可欠ですが、中国ではブランドを無断で利用する模倣品被害が蔓延しており、その被害からブランドや技術を守ってくれるのが、商標権、発明・実用新案・意匠の権利です(※1)。製品のデザイン図や設計図で創作性のあるものは著作権として中国でも保護されます。
しかし、日本で登録を受けていてもダメで、中国でも出願して登録を受けて権利化する必要があります(※2)。これを知的財産権の属地主義と呼び、知的財産権は各国毎に権利として認められて初めて保護を受けることができるという制度です。
中国は2001年にWTO条約に加盟し、商標法・特許法(専利法)・著作権法等の法整備が行われ、世界から中国への出願が増加し、国内企業も出願を増加させた結果、2010年頃には中国の出願件数は世界一となり、知財大国となりました。因みに、中国の2014年の商標の出願件数は228万件(日本は12万件)、発明特許出願件数は92万件(日本の特許出願件数は32万件)です。問題は中国で登録された権利が正しく保護されているかですが、模倣品が氾濫している現状では保護が不十分といわざるをえません。欧米諸国や日本を初め諸外国から中国政府に対して知的財産権保護を強化するように要請を続ける中で、徐々にではありますが、中国国内での知的財産権保護が強化されて、改善されている傾向にあり、そのような状況下で日本のブランド・技術の権利として登録を受けて製造販売のビジネス展開を行っていくことになります。
従って、先ずは出願をするということが肝要で、自社の技術は中国へも特許出願等を行うべきです。また、中国には日本企業が中国に進出する情報を探して、先に商標を出願する者がおり、日本企業が中国で自社の商標を使用できなくなったり、先に受けた登録商標権を高額で買取りを求めてくる者もおり、進出を決めたらすぐに商標だけでも出願しておくべきです。
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※1 日本では特許権・実用新案権・意匠権ですが、中国では発明専利権・実用新型専利権・外観設計専利権と呼びます。
※2 著作権は登録等は必要がありませんが、権利の証明のために公的な書面を要求されるので任意登録制度を利用すべきです。