コラム

税金の争い方

2021年10月
小澤 拓

 

第1 はじめに

課税に対して不服がある場合には、法的手続により争うことができます。

しかしながら、税金には様々な種類があり、実際に争う場合にどのような手続を選択すべきなのか、専門家でも判断に悩むことが珍しくありません。手続を誤った場合には、たとえ不服の内容が法的に正しくても、申立てが不適法であるとして、中身の判断に入ることなく「門前払い」の判断がされてしまうことになります。そこで本稿では、課税の争い方の概要をご紹介いたします。

 

第2 課税処分に対する再調査請求・審査請求

1 課税処分を争う場合、不服申立前置主義が採用されています。これにより、裁判所に対していきなり訴訟を提起することはできず、まずは行政上の不服申立手続により争う必要があります。

これには2通りのパターンがあり、いずれかのパターンを経る必要があります。

 

2 まずは、再調査請求→審査請求のパターンです。

課税処分に不服がある場合、その処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、再調査請求をすることができます。これは、課税処分を行った課税庁に対して再度の調査を求める制度です。

再調査請求を行った結果、課税処分が覆らなかった場合には、それを不服として審査請求をすることができます。審査請求は再調査請求と同じ行政上の不服申立手続ですが、課税庁に対する再調査請求と異なり、課税庁とは別の独立した国税不服審判所という行政組織に対する不服申立てです。再調査請求を経て審査請求を申し立てる場合には、再調査決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1か月以内に申立てを行う必要があります。

 

3 次に、再調査請求を経ずに、直接審査請求を行うパターンです。

再調査請求は、もともとの課税処分を行った課税庁に対して再度の調査を求める制度であるため、再度の調査によっても処分が覆る見通しが低い場合等は、再調査請求を経ずに直接審査請求を行うことも少なくありません。

この場合、課税処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に申立てを行う必要があります。

 

第3 訴訟手続

以上のような不服申立手続で課税処分が覆らない場合は、課税処分の取消しを求めて裁判所に訴訟を提起することになります。

訴訟提起は、審査請求に対する国税不服審判所の判断(「裁決」といいます)があったことを知った日から6か月以内に行う必要があります。

 

第4 どの「処分」を争うのか

1 税金に対する争いにおいては、原則として課税処分の取消しを求めることになりますが、一口に「課税処分」といっても、税金の中には、何が「課税処分」になるのか、はっきりとしないものがあります。代表例が源泉所得税です。源泉所得税の納税義務は、確定申告等の手続を要することなく当然に成立すると解されていますので、「課税処分」が存在せず、何を争えばよいのか、直ちに判断することはできません。

源泉所得税の場合、納税の告知という手続があり、最高裁は、この納税の告知を「処分」ととらえ、納税告知処分の取消しを求める方法で争うことができると判断しています(最高裁昭和45年12月24日判決民集第24巻13号2243頁)。

他方で、源泉所得税と同じく、確定申告等の手続を要することなく当然に納税義務が成立すると解されているものとして延滞税がありますが、延滞税に関する通知は、源泉所得税における納税の告知と異なり、「処分」ではないと解されています。ちなみに、延滞税は、「処分」が存在しないため、審査請求を経ずに、延滞税の納税義務が存在しないことを確認する等の訴訟を提起することになります。

 

2 このように、税金の種類によって争うための手続や争う対象が変わり、これらの選択を誤った場合には、救済を求めることができないので、注意する必要があります。