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コラム

コーポレートガバナンス・コードの改訂について

2018年07月

弁護士: 松本 実華

分 野: 内部統制・企業統治

 コーポレートガバナンス・コード(以下、「CGコード」といいます)とは、実効的なコーポレートガバナンスの実現のための主要な原則をとりまとめたものです。この度、このCGコードの定着状況等について議論するため設置された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、「フォローアップ会議」といいます)が、CGコードの改訂を提言しました。
 フォローアップ会議による改訂案の提言は、コーポレートガバナンス改革をより実質的なものへと深化させるためのものであり、これに基づき、CGコードの改訂が期待されます。以下では、改訂案の主な内容をご紹介いたします。なお、詳細は、金融庁のサイト(https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/
siryou/20180313.html
)で公表されています。

1 CEOの選解任及び後継者の育成

 現在のCGコード(以下、「現CGコード」といいます)は、CEOの選解任は公正かつ透明性の高い手続に従うこと、取締役会は最高経営責任者の後継者の計画を適切に監督することを規定しています。しかし、フォローアップ会議においては、CEOの選解任は企業にとって最も重要な戦略的意思決定であるにもかかわらず、CEOの育成・選任に向けた取組みが不十分である企業が多いとの指摘がなされました。
 そこで、改訂案では、「CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべき」と、CEOの選解任の重要性が明記されました。また、後継者の育成については、取締役会は「後継者計画の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう」適切に監督すべきとしています。

2 取締役会の機能発揮等

 現CGコードは、取締役会は多様性・適正規模を両立させる形で構成されるべきであると規定しています。しかし、フォローアップ会議においては、我が国の上場企業役員に占める女性の割合は3.7%にとどまっており、取締役会の機能を十分に発揮していくためには、ジェンダーや国際性の面を含む多様性を十分に確保する必要があると指摘されました。
 このような指摘を受け、改訂案では、取締役会の構成として、「ジェンダーや国際性の面を含む」多様性を確保する必要があると明記されています。

3 政策保有株式

 現CGコードにおいても政策保有株式に関する基本原則が掲げられていますが、これは政策保有株式を有する側の上場会社に関する原則です。しかし、我が国では政策保有株式が議決権に占める比率が高い水準にあることから、このような安定株主の存在が企業経営に対する規律の緩みを生じさせているのではないか、資本管理上非効率であるのではないかという指摘がなされました。
 そこで、改訂案では、政策保有株式を保有させている側の会社に対する規律付けが導入されました。具体的には、①政策保有株主から株式の売却等の意向が示された場合、取引の縮減を示唆することなどにより売却等を妨げるべきでないこと、②政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではないことが規定されています。

4 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮

 資産面におけるコーポレートガバナンス改革にとって重要なのが、アセットオーナーです。このうち、企業年金についてはあまり活用されておらず、運用に携わる人材が不足しているのではないかという指摘なされました。
 そこで、改訂案においては、企業年金の「運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組み」を行い、これを開示すべきとしています。

(2018年4月)
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