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コラム

固定資産税と接道義務

2018年10月

第1 はじめに

 不動産の所有者には、固定資産税が課税されます。そして、固定資産税の課税標準は、課税台帳に登録される、固定資産の価格(以下、「登録価格」という)とされており、この「価格」とは、「適正な時価」をいうとされています(地方税法341条5号)。また、登録価格の決定の際には、それが「適正な時価」から乖離しないよう、総務大臣が告示する固定資産評価基準に従わなければならないとされています(地方税法403条1項)。
 近時、京都市長が決定した登録価格に対し、最判平成30年7月17日裁判所ウェブサイト(以下、「本判決」といい、本判決にかかる事案を「本事案」という)が興味深い判断を示したため、以下、紹介します。

第2 本判決の概要

 本事案で、京都市長は、納税者が所有する4筆の土地(以下、「本件各土地」という)について、本件各土地に接する街路(以下、「本件街路」という)が建築基準法上の「道路」(以下、単に「道路」という)に該当するため、本件各土地は「道路」に接した土地であるとして登録価格(以下、「本件登録価格」という)を決定しました。ある土地が「道路」に接していれば、建築基準法上の接道義務を満たすこととなります。そして、接道義務を満たした土地は、建築基準法上の規制の関係等から、同義務を満たしていない土地と比べて時価が大幅に高くなります。すなわち、納税者から見れば、自身の所有する土地に接する街路が「道路」に該当すると判断された場合、自身の所有する土地が接道義務を満たすこととなる結果、当該土地の登録価格が跳ね上がり、高額の固定資産税が課されることとなります。
 本事案で納税者は、本件各土地に接する本件街路は客観的に「道路」に該当しないにもかかわらず、これが「道路」に該当すると判断され、その結果、本件各土地が接道義務を満たすことを前提とした誤った課税がされたと主張し、本訴を提起しました。

 

 原判決は、本件各土地は接道義務を満たす土地であるとして、納税者の主張を退けました。その理由として、本件各土地に接する本件街路は、客観的に「道路」に該当するか否かは「明らかでない」としながら、本件街路については、従前、京都市長より、「道路」に該当するとの判定(以下、「本件道路判定」という)を受けているため、これにより、事実上、本件街路は「道路」としての取扱いを受けることになるから、登録価格を決定する上でも本件街路を「道路」と扱って良い旨の判示をしました。

 

 これに対して本判決は、「道路」に該当するか否かはあくまで建築基準法が定める要件を客観的に満たすか否かによって決まり、本件道路判定があることは理由にならない旨を判示し、本件街路が客観的に「道路」に該当するか否かは「明らかでない」にもかかわらず、本件道路判定があることを理由に本件街路を「道路」と認定し、それを前提に本件各土地の登録価格を決定した原判決は違法であるとしました。

第3 登録価格の決定に対する問題意識

 固定資産税は、不動産を有する方にとって極めて大きな影響のある税金です。その税額を定めるにあたっては、「適正な時価」によるべきであるにも関わらず、本事案のように、道路判定の存在という形式的な理由によって、実態と乖離した判断が下されることが少なくありません。
本判決は、このような状況に一石を投じるものとして、今後の実務において参照されるべき内容と考えられます。

(2018年8月)
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