COLUMNS

コラム

法定相続情報証明制度

2017年12月

弁護士: 小澤 拓

分 野: 遺言・相続

1 制度の概要

 平成29年5月29日から、相続後の手続の簡素化を目的とする、「法定相続情報証明制度」(以下、「本制度」といいます)がスタートしました。
 本制度は、ある人が亡くなり相続が開始したときに、被相続人の戸籍(除籍)謄本及び住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本等の必要書類を収集し、法定相続情報一覧図を作成の上、登記所に申出書を提出することにより、相続人に「法定相続情報一覧図」の写しを無料で必要な通数交付し、当該書面で相続人がすべき種々の手続をできる限り行うことができるようにするというものです。以下では、本制度の概要について、紹介します(詳しくは、法務省のホームページ http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html をご参照ください)。

2 制度新設の背景

 ある人が亡くなった場合、相続が開始します。亡くなった方(被相続人)の有していた財産は、原則として法律上定められた相続人に相続されます。
 もっとも、法律上は相続が開始していても、例えば、被相続人が不動産を有していた場合、その不動産について「相続により不動産の所有権が相続人に移転した」という登記手続(相続登記)をする必要があります。この相続登記の手続は相続人が行う必要があります。また、相続人は、金融機関に対して預貯金の照会をする等して、被相続人がどのような財産を有していたのかを調査する必要もあります。
 相続人がこれらの手続を行う際には、その都度、自分が相続人であることを証明する文書(被相続人の戸籍(除籍)謄本及び住民票の除票、相続人全員の戸籍謄本)の原本を逐一提出する必要があります。戸籍謄本等は、1通発行する度に手数料が発生するので、複数機関に提出する必要があっても、1通ずつしか取得しないという方も多いと思われます。その結果、1通ずつの戸籍謄本等を使いまわすことになり、例えば、銀行に対して被相続人名義の預金を照会するために戸籍謄本等を提出した後、その返却を受けてから被相続人が所有していた不動産につき相続登記をする、という具合に、効率の悪い方法をとらざるをえませんでした。他方で、必要な数だけ戸籍謄本等を取得するにも、その分手数料がかかります。
 以上のとおり、戸籍謄本等を逐一提出することが相続人の負担となっていたことから、相続登記等がされないまま放置する事案が増え、昨今の空家問題等の社会問題の原因の一つとなっていました。

3 本制度による負担の軽減

 本制度により、相続人からの申請に基づき、相続人に対し、「法定相続情報一覧図」が交付され、これが、相続人であることを証明する戸籍謄本等の代わりの役割を果たします。すなわち、従来であれば戸籍謄本等の提出が必要であったところ、本制度により、「法定相続情報一覧図」を1枚提出するだけで足りることとなります。
 「法定相続情報一覧図」は、必要な通数が無料で交付されるので、相続人の負担は大幅に軽減されます。

4 本制度利用の手続ができる方

 「法定相続情報一覧図」の交付を申請できるのは、法定相続人及び相続人の地位を相続により承継した者です。代理人による申請も可能ですが、代理人となれるのは、相続人の親族又は弁護士等一定の有資格者に限られます。

5 最後に

 以上のとおり、本制度により、従来であれば戸籍謄本等の提出が必要であった手続でも、「法定相続情報一覧図」を1枚提出するだけで済むようになりました。これにより、相続登記等の手続がされないままに放置される遺産が減ることが期待されます。

トップコラム法定相続情報証明制度

Page Top