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行政不服審査法改正 審理員による審査請求手続

2016年03月

はじめに

 行政処分に対する不服申立手続を規定する改正行政不服審査法が今年4月から施行される予定である。今回の改正は行政処分に対する不服申立制度をより利用しやすくするための改正であるが、改正に伴い、「審理員制度」という新たな審査手続が導入されることになっている。
 例えば、地方自治体の首長がした処分に対する審査請求手続においては、当該自治体の職員又は弁護士等の外部者が審理員に指名され、指名を受けた審理員が審査請求手続を主宰し、当該処分の適法・違法又は当・不当についての意見を述べるものとされている。
 今回のKyoei Law Letterでは、審理員が主宰する審査請求手続を、改正後の条文とともに確認しておきたい(以下において「法」とは、改正後の行政不服審査法を指す)。

1 審査請求書の送付・弁明書の提出要求

(1) 審査請求人から提出された審査請求書は、審査庁が受付をし、適法性審査を行う。不備がある場合、補正命令がなされるが、補正されない場合や補正できないことが明らかである場合、審査請求は却下される。

 

(2) 審査庁は、審理員を指名する。指名を受けた審理員は、処分庁に対し弁明書の提出を求める(法29条2項)。
弁明書には、行政手続法24条1項の調書、同条3項の報告書、29条1項の弁明書を添付するものとされている(法29条4項)。

 

(3) 弁明書の提出を受けた審理員は、審査請求人に対し、弁明書を送付し、反論書の提出期限を設定しそれを通知する。

2 反論書・意見書等の提出

(1) 審査請求人は、弁明書に対する反論書を提出することができる。
審理員が反論書を提出すべき期間を定めた場合はその期間内に提出しなければならない(法30条1項ただし書き)。

 

(2) 利害関係人は、審理員の許可を得て、審査請求事件に参加することができる(法13条1項)。
 また、審理員は、必要があると認める場合には、利害関係人に対し、審査請求事件に参加することを求めることができる(法13条2項)。
参加人は、審査請求事件に関する意見を記載した書面(意見書)を提出することができる(法30条2項)。

3 証拠書類の提出

 審査請求人及び処分庁は、自らの主張を理由付けるため、証拠書類を提出することができる(法32条1項、2項)。審理員が証拠書類等を提出すべき期限を定めたときは、審理関係人はその期間内に提出しなければならない(法32条3項)。

4 書類その他の物件の提出要求

 審理員は、審査請求人の申立て又は職権で、書類その他物件の所持人に対し、相当の期間を定めて、その物件の提出を求めることができる(法33条)。

5 提出書類等の閲覧等

 審査請求人は、審理手続が終結するまでの間、審理員に提出された書類その他の物件の閲覧又は写しの交付を求めることができ、審理員は、正当な理由があるときでなければ、これを拒否することはできない(法38条1項)。
 なお、旧法では、処分庁から提出された書類その他の物件にかかる閲覧請求として規定されていたが、新法では請求の対象が拡大されるとともに、写し等の交付の請求も認めるものとされた。

6 審理関係人への質問

 審理員は、審査請求人の申立て又は職権で、審査請求事件に関し、審理関係人に質問をすることができる(法36条)。

7 鑑定・検証

 審理員は、審査請求人の申立て又は職権で、鑑定を求めることや、必要な場所につき検証を行うことができる(法34条、35条)。

8 争点の整理

(1) 審理員は、審査請求書、反論書、弁明書や証拠書類をもとに、争点を整理する。

 

(2) 審理員は、事案が複雑である場合等は、必要に応じ、審理関係人から意見聴取を行うことができる(法37条1項)。
 意見聴取を行った場合、審理員は、その結果を踏まえ、審理予定を決定し、審査関係人に通知する(法37条3項)。

9 口頭意見陳述

 審査請求人は、口頭意見陳述の申立てをすることができ、口頭意見陳述の申立てがあった場合、審理員は、その機会を与えることが困難である場合を除き、口頭意見陳述を実施する(法31条1項)。
 口頭意見陳述は、すべての審理関係人を招集して行うものとされており(法31条2項)、申立人は、口頭意見陳述の際、処分庁に対し質問を発することもできる(同条5項)。

10 審査手続の併合または分離

 審理員は、必要があると認める場合には、数個の審査請求事件に係る審理手続を併合し、又は併合された審理手続を分離することができる(法39条)。

11 審査員による執行停止の意見書

 審理員は、審査庁に対し、処分の執行を停止すべき旨の意見書を提出することができる(法40条)。

12 審理手続の終結

 審査手続は、必要な審理を終えたと認めるときに終結する(法41条1項)。
審理員は、審査手続を終結したときは、その旨及び審理員意見書を審査庁に提出する予定時期を審査関係人に対し通知する。(同条3項)。
 審理手続が終結した後、審理員は、審理員意見書を作成し審査庁に提出する。審査庁は、第三者機関への諮問結果も踏まえ、審査請求に対する判断を示すことになる。今回の改正により導入される審理員制度により、行政救済制度がより実効性の高いものとなることが期待される。

(事務所報 №6 2016年2月号掲載)
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